ハリウッド映画で使われる 3Dモデルや、CGパースのそれに比べると(プリレンダリング)、VR向けの3Dモデルには多くの制約がある。ゲーム業界と同様に。(リアルタイムレンダリング)
プリレンダリングとリアルタイムレンダリング
プリレンダリングされた 10分の動画は、どんな環境で再生しても 10分の尺だ。けれど、これがリアルタイムレンダリングで再生されるとすると、5分で再生が終わったり、10分立ってもまだ半分しか再生していないなんてこともありうる。プリレンダリングされた画像では、環境によって画像が変化したりはしない。リアルタイムレンダリングでは簡略化されて表示されたり、色数が少なくなったり、いつでも変化する可能性がある。
100台のPCで再生すれば、どのPCでも違った結果で表示されるのがリアルタイムレンダリングだ。たった一枚の画像を表示するのでさえも、その環境の(具体的にはグラフィックボードの)力を借りているのだ。
制約があるということ
リアルタイムレンダリング用のモデルを作るとき、プリレンダリング用途とまったく異なるのは、再生される環境を考えなければならないこと。再生内容は環境に大きく左右されるからだ。環境が決まらなければ、制作は始まらない。
この辺りがきちんと体系化されているのがゲーム制作会社。まず、再生するプラットフォーム(ゲーム機)は、通常同じハードウェアだ。デザイナーとプログラマーの領域もはっきりしている。ゲーム機のスペックとプログラムなどの負荷を考慮した上で、シーン当たりにどれほどのポリゴン数で、何MBまでのテクスチャでという仕様書が出来上がる。(実際にはそんな単純な話じゃないけど。)
制約は創造性を育む
つまり、デザイナーは与えられた制限の中で最高の表現をするために試行錯誤する必要があった。そんな背景の中で生まれたのが「ローポリ」だったり「ドット絵」みたいなテクニックだったりなんだと思う。(アイザワはそんなに昔の話は知らないので想像なんだけど)
確かに最近は、プリレンダリング用のモデルでもリアルタイムに動かせるほどハードウェア性能が向上している。だけど、制約を意識することが、創造性を育むのだ。
リアルタイムにライティングの計算が出来ない? だったら、始めからテクスチャに焼き付けておこう。モーションブラーがレンダリングできない? そんなの半透明のモデルを重ねたらソレっぽく見えるでしょ。
リアルタイム系モデラーは制約の中で、プリレンダリングに負けない品質を求めてきた。最近のゲームのなかには、リアルタイムのレンダリングとは思えないほど美しいタイトルもある。それは単純にハードウェア性能の向上だけでなく、創造性のある技法に依るところが大きい。
続く